序論:芸能界から牧場へ
モデルや女優として活躍し、華やかな世界にいた紗栄子さん。
そんな彼女が2020年に栃木県大田原市へ移住し、「NASU FARM VILLAGE」という大きな牧場を始めました。
この転身は驚きでしたが、実は長年続けてきた社会活動や動物への思いやりが形になったものです。
牧場経営は思いつきではなく、彼女にとって必然的な選択だったのです。
第1章:動物を守るという使命
NASU FARM VILLAGEの最も大切な目的は「動物を守ること」です。
日本では、レースや乗馬で活躍した馬が引退すると、多くが殺処分されてしまいます。毎年3,000頭以上が命を落としていると言われています。紗栄子さんはこの現実を変えるため、引退馬に「新しい人生」を与える場所を作りました。
牧場には、処分されそうになった馬たちが第二の人生を歩んでいます。
ケガから回復してレッスンで活躍する「フウカ」、学校で活動した後に迎えられた「ジェニオ」、病気を抱えながらも人を癒す「リーガルカウンセル」など、それぞれのストーリーが牧場の意味を物語ります。
さらに活動は猫や犬にも広がりました。牧場近くで野良猫を見かけたことをきっかけに、110匹以上を保護。手術やワクチンを行い、里親へつなげてきました。
悲しい過去を持つ動物たちに新しい居場所を与える姿は、目の前の問題にすぐ行動で応える紗栄子さんの姿勢そのものです。
第2章:牧場を引き継ぐ決意
NASU FARM VILLAGEは、もともと別の名前で運営されていました。
しかし経営者が変わり、動物やスタッフの将来が不安定になりました。その状況を知った紗栄子さんは「自分にできることがあるのでは」と考え、悩んだ末に運営を引き受ける決意を固めました。
決め手になったのはスタッフの言葉です。「あなたがやってくれるなら、私たちも頑張れる」。この一言が彼女の背中を押しました。
こうして牧場は「NASU FARM VILLAGE」として再スタートし、紗栄子さんは栃木に住民票を移し、本格的に牧場と向き合うことになりました。
第3章:牧場を支える仕組み
牧場は寄付に頼るだけでなく、自らお金を生み出す工夫をしています。
動物を守り続けるために、楽しさと支援を結びつけた仕組みを整えました。
- 体験ツアー:馬に乗ったりふれあったりできる体験イベント。楽しみながら支援につながります。
- グッズ販売:オリジナル商品を販売。「買うこと」がそのまま支援になります。
- 飲食事業:牧場の野菜を使った料理や、オリジナルドリンクを楽しめるカフェ。
- クラウドファンディング:落雷から馬を守る避雷針設置のための企画では、目標1,500万円を大きく上回り、7,600万円以上を集めました。
このように「楽しみながら動物を守る」という循環を作り、持続可能な経営を実現しています。
第4章:これまでの活動とのつながり
紗栄子さんの社会活動は、牧場を始める前から続いていました。
2010年、出身地・宮崎県で口蹄疫が流行したときに義援金を寄付したのが最初です。その後も台風や地震の被災地を支援し、2019年には「Think The DAY」という団体を設立しました。
この団体は「災害が起きる前に備える」ことを大切にしています。防災グッズの販売や被災地への物資支援などを通じて活動を展開しています。NASU FARM VILLAGEも同じ考え方で、馬にとって「引退=危機」となる前に受け入れて守る仕組みを整えています。
まさに「予防支援の場」と言えるでしょう。
第5章:協力と未来への展望
牧場の土地はベンチャー企業「NOT A HOTEL」が所有し、紗栄子さんは運営を担っています。この協力により、土地取得の負担を避けつつ、それぞれの強みを活かすことができています。「NOT A HOTEL」にとっては牧場が価値を高め、紗栄子さんにとっては運営の基盤を確保できる、双方にとって有益な関係です。
今後はさらに多くの動物を守り、自然と共に生きるライフスタイルを広めることを目指しています。新しいネットショップの立ち上げも計画され、日常生活の中で動物保護を支援できる仕組みが広がっていくでしょう。
結論:新しい社会活動のかたち
紗栄子さんが牧場を経営する理由は、一つではありません。動物を守りたいという使命感、牧場を存続させたいという強い決意、持続可能な仕組みの工夫、災害支援から学んだ経験、そして仲間との協力。これらが重なり合ってNASU FARM VILLAGEが誕生しました。
この牧場は「芸能人がただ寄付する」のではなく、「楽しみながら社会貢献できる仕組み」を作り出す新しい社会活動のモデルです。今後も、多くの人にインスピレーションを与え続ける存在となるでしょう。
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